M氏:創作:短編小説

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冷えた風が湿る
ただ外に遊びに出るだけの予定だった
友達と公園に行って
一緒に遊んで
暗くなる前に帰る

季節のせいで早く落ちる日に拗ねて
少しだけなら大丈夫だと友達と笑って
それが悪い事なのは分かってたけど
でも変質者に襲われる程の事じゃない
そうでしょ?

物心ついた頃から可愛い可愛いと褒められた
自分でもそう思える程に自惚れた
だから襲われた
無理やり服を裂かれて口を抑えられて
汚いモノを見せつけられて

殺されてしまうと思った

『レディの扱いがなってないわね』

街灯も遮る路地裏に舞う蝶
指通りの良さそうな濡羽色の髪は艶を帯びながら風を受ける
透き通るような白い柔肌に黒いマニキュア
潤いのある唇には薔薇のような紅

『女は襲うんじゃなくて堕とすのよ、覚えておきなさい坊や』

女でありながら
子供でありながら
彼女の妖艶さに当てられて頬を染めてしまう
彼女と自分以外に誰かが居る事も忘れてしまう
それ程に彼女の生奪の動きが美しかった

『そんなに見つめても何も出ないわよ?』

先程まで助けを求めて泣き叫んでいた自分の頬をソッと撫でられる
ワインレッドの瞳に映る自分は醜かった
涙に鼻水と液体まみれ…彼女とは月とすっぽん

『お嬢ちゃん、貴女はとても聡明な子だと思ってるわ』

恐怖とは全く違う胸の高鳴りが煩い
それなのに彼女の艶のある声は全て聞き取れる
唇の動きも舌の動きも口角の動きも
一つ一つを目に焼き付けるように見てしまう

『だから此処で起きた事は忘れられる、そうでしょう?』

彼女の問い掛けに魂が抜かれるように“はい”と答える
彼女のクスリと微笑む姿も麗しい
“良い子ね”と言葉を最後に置いて彼女は自分に背中を向けた
彼女の姿が見えなくなるのを待つようにパラパラと空が泣く

もしかしたら全て夢だったのかもしれないと思う程の美しさだった
でも自分のお気に入りの服は破かれたままだ
抑えられていた口元はヒリヒリするし
溢れていた涙で頬はキシキシとした違和感を産む

襲われていた事も薄まる程に彼女が美しかった
それだけで全て夢だったのではと考えるなんておかしいのかもしれない
でもそれくらいの美しさが彼女にあったのだ
彼女にもう一度会えるなら恐怖をも受け入れたいと思える

所謂一目惚れに近いものなのだろうか


お題:柔らかい雨
作者:M氏
出演:オンディーヌ


【あとがき】
お題あんま使わなかったけども書きました
柔らかな雨って暖かそうですよね
寒そうなのに暖かそうと言う不思議なイメージです
なのでとある子の複雑な感じのなんかよく分からない何かを書きました
すみません、M氏今凄く眠いんです
脳死で書いてます
もしかしたら書き直します

11/6/2023, 10:34:18 AM