この感情に、意味は無い。
長月の、夜も深まる時間。
煙草をふかしながら、つんとした冬特有の空気を吸い込む。
冬の夜は音さえも寝静まり、
かすかに聞こえるのは、此方に背を向けて眠る少女の寝息だけだ。
まだ16歳のその青白い肌には、許されざるその生まれ──半隠半人と言う、混じりものを決して認めない"隠"という種族には相容れない存在──、そして育てる事を放棄され、
今の歳まで誰にも頼る事ができず、たった1人で生きてきた、そんな無数の傷が刻まれている。
かわいそう、と 思わない訳では無い。
口に出すのも簡単だ。
だが、彼女の覚悟と想いを
そんな軽い言葉で表すことは、許されないように思うのだ。
哀愁を唆るその背中を見た、
この感情に、意味は無い。
この感情に、意味を持たせてはいけない──。
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隠: 「おに」
人間を主食とする古来より存在する種族。
純血至上主義であり、血が混じることを決して許さない。
という設定
11/4/2023, 12:50:45 PM