鏡
かがみの孤城 ※ネタバレ注意
_______________________
たとえば、夢見るときがある。
転入生がやってくる。
その子はなんでもできる、素敵な子。
クラスで一番、明るくて、優しくて、
運動神経がよくて、しかも、頭もよくて、
みんなその子と友達になりたがる。
だけどその子は、たくさんいるクラスメートの中に
私がいることに気がついて、
その顔にお日様みたいな眩しく、
優しい微笑みをふわーっと浮かべる。
私に近づき、
「こころちゃん、ひさしぶり!」
と挨拶をする。
周りの子がみんな息を呑む中、
「前から知ってるの。ね?」
と私に目配せをする。
みんなの知らないところで私たちは、もう、友達。
私に特別なところがなくても、
私が運動神経が特別よくなくても、
頭がよくなくても、
私に、みんなが羨ましがるような長所が、
本当に、何にもなくても。
ただ、みんなより先に
その子と知り合う機会があって、
すでに仲良くなっていたという絆だけで、
私はその子の一番の仲良しに選んでもらえる。
トイレに行く時も、教室移動も、休み時間も。
だからもう、私は一人じゃない。
真田さんのグループが、
この子とどれだけ仲良くしたがっても。
その子は、
「私はこころちゃんといる」
と、私の方を選んでくれる。
そんな奇跡が起きたらいいと、
ずっと、
願っている。
そんな奇跡が起きないとは、知っている。
8/18/2022, 11:26:00 AM