book and piano

Open App

「時間よ止まれ」

 彼の腕の中に包まれている時、私はこんなに、女の子だったっけと思う。

 筋肉のある、逞しい身体に、温かい腕の中に包まれている時、守られている気がして、私は女の人だったんだって思ってしまう。

 中学生の時、私は割と成績が良かったし、男子より強かった。なので、「守りたい」と言っている男子たちの言葉に、頭が?のクエッションマークだった。

 時が過ぎて、私も、社会人になってしまった。

 優等生だった、私も高校、大学、社会人になって、上をみれば、見るほど切りがなく、そして、挫折もたくさんしてきた。

 10代は、差し置いて、20代から、ほぼほぼ恋愛してきてなかった私の33歳にしてできた彼とのお付き合いは、もう大分、大人の恋愛だったし、学ぶことの多い、そして、二人で育んできたような、恋愛だった。「守られる」感じがしたのも、彼と付き合って初めての感じだった。


 あんまり、意識はしたことがないのだか、私たちは、6歳差。だから、彼にリードされて、私がついていく喜び。
 三歩下がって、ついていくって、今どき流行らないかも知れないと思うのだけど、彼の職業的にも、なにか、心のなかでは、私は彼を尊重して、尊敬しているので、そんな心づもりでついていく。ランチや、ディナーも、センスがよくて、それでいて、肩ひじはらない、居心地良さそうな、お店を選んでくれるので、初めての「守られて」いる、そんな気持ちになる。


 彼との愛する時間のあと、いつも、たくましい腕の中で包み込まれて、私はとても、“守られてる”女性になってしまう。

包み込まれている。


 世間の中では、強くないと、生きていけない。

 でも、彼との話しと言葉と腕の中だけは、私は無防備で、非力な女の子で、守られるのが、嬉しい、少女になってしまう。

 温かい腕の中で、包み込まれているとき、「このまま時間が止まればいい」と、思ってしまう。これまでに、感じたことのない、幸福感に包み込まれてしまう。
 そして、腕の中でキスしたり、たわいのない会話をしたり、じゃれあったり、手を重ね合わせたり…それは、幸せ極まりない。
 
 そして、私達二人の趣味は音楽鑑賞。

 二人で一緒に聴いて、彼が、いい曲だったといって、私も素敵な曲だった、と、共有できるのも嬉しい。いい曲だったね。そして、ふたりは、静かに手を繋いで、散歩する。二人の間にある旋律を、演奏するかのように、歩く。同じ速度で、同じ温かさを、共有するかのように。

 
 そして、彼にみつめられ、私も彼にみつめられるとき、私は願う――――「時間よ止まれ」


 彼の腕の中だけお姫さまのような、少女になる。
 そして、とっても、ありのままの私で甘えられる。癒やされる。

 だから今のままで十分王子さまなので、たくましい王子さまでありつづけてほしいな。

 私も彼に守られて、力をつけて、社会で、がんばるよ。

 私をこれからも、守ってくれたら、嬉しい。
 私もあなたを守れるように。



 いつもありがとう。


                2022.9.20


9/19/2022, 3:32:08 PM