いちご

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卒業祝いに、花束をもらった

最後のセーラー服に身を包みながらその花束を抱えて

一人で海まで歩いた。

3月の海 誰もいない

午後16時。

もう空は青黒かった

だいすきだったこのセーラー服も、
すきという想いをあの子に伝えられなかったことも、
卒業目前で喧嘩して仲直りできなかったその子も、
私の 中学生 も、

ぜんぶ

ぜんぶ

終わってしまった。

あんなに あっさり


なんか ムカついた

なんか 悔しくなってきた

なんか 寂しいし

なんか 嬉しくもあるし。


このムシャグシャな気持ちを海に飛び込んで消そうとした

花束を抱えて

靴を脱いで

勢いよく走った

砂浜に足を取られないように

「 バシャーン!!」という音と共に

私は海に飛び込んだ。

3月の海

つめたい

花束もぐちゃぐちゃになった

でも、
でも、

なんだかすこし
なんだかほんのすこしだけ

頭も冷めてきた


私の中学生は終わった
Jk にはなりたくなかった
だってまだずっと少女で居たかった

中学生で居たかった
中学生で痛かった。

まだ なにも変われてないのに
まだ わたしクラスの子みたいに大人になれないよ

海に浮かびながら わんわん泣いた

目が腫れた

ぐちゃぐちゃになった花束をかき集めて

靴を持って裸足でアスファルトの上を歩いた

帰り途中、

'すきという想いを伝えられなかったあの子' に遭遇した

なんでそんなに濡れてんだよ と苦笑いで心配してくれた

家からバスタオルを持ってきて

頭を拭いてくれた

だから、それが嬉しくて つい、言ってしまった

「すき。」

あの子 また苦笑いだった

でも俺も好きだよって 言ってくれた

顔が、耳が、心臓の奥が ポッ て赤くなった気がした






翌日 39度の熱が出た

なんだかしあわせだった




< 花束 >
2024. 02010.
8:03 am

2/9/2024, 11:03:15 PM