⚠️ナマモノ⚠️
「輪廻」の第2章2節予定部分。
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2. 市街地
薄暗い森を抜けた先には、家々が立ち並ぶ市街地があった。
曲がり角や路地裏からの奇襲を警戒しながらゆっくり進み、一際豪奢な邸宅の前をじりじりと通り過ぎる。
ぱっ、と赤光が彼女の首元に閃く。
ぎりぎりで軌道を読み、弾き返した𓏸はバックステップで距離をとる。
×××「……ちっ、流石に警戒してたか。」
𓏸「咥え煙草。その癖治さないと生き残れてもせいぜい10年程度ですよ。」
×××「…心配しなくても、ここで死ぬあんたよりは長生きするさ。」
彼は従えていた4振りの刀の切っ先を𓏸に向ける。
ぎらりと光る赤黒い刃は今にでも突き刺さらんと主である×××の命令を待っている。
もう2振りは彼の両手にしかと収まっていた。
煙草の火を揉み消した×××とスコップの柄を握り直した𓏸は、互いの冷たい覚悟が滲んだ双眸を数秒見つめ、地面を蹴った。
交戦から5分。弾いても弾いても襲い来る4振りの刀に𓏸は防戦を強いられていた。
×××から目を逸らしたら死ぬ。
そんな予感が心臓を縛りあげる。
万に一つの間違いも起こらないよう慎重に飛び交う刀を捌く。
その一方、×××もまた決め手に欠けていた。
𓏸は飛び回る4振りの刀を制することにリソースを割いているため、武器は使えない。
自分の両手にある2振りの刀で彼女を切り裂けばそれで終わるはずだ。
しかし、彼女の氷柱のような視線が×××の手足を縫い留めていた。
迂闊な行動は、彼女のカウンターの餌食になるだろう。
膠着状態のまま10分が経った。
パキン、と軽い音を立てて砕け、地に落ちる4振りの刀。
15分にわたる緊迫した攻防。
先に音を上げたのは×××だった。
精神的疲労の蓄積によって崩れ落ちた浮遊刀は粒子となり消え去った。
そもそもこのアーティファクトは長時間使用に向いていない。
体力に不安のある×××に与えられた、起死回生の短期決戦型武器。
自在に武器を飛び回らせるのは非常に難しい。
3手先を見通す明晰な頭脳、繊細な軌道を即座にイメージできる高い想像力、そしてなにより膨大な精神的エネルギーを消費するのだ。
刀が完全に消失したのを確認した𓏸は、そのまま×××への攻撃を開始する。
戦局は一転し、疲労により精彩を欠いた×××はじりじりと押されていく。
握力の弱くなった左手の刀が弾き飛ばされる。
シャベルの先端が左頬を掠めて、彼の髪色と同じ深紅の線を引いた。
好機と見たか、真上にシャベルを振りかぶった彼女の胴にカウンターを入れようと×××は刀を横に振った。
一拍遅れて気がつく。
ああ、これはトラップだったんだ。
高く飛び上がった彼女は低く薙ぎ払うような×××の一撃を交わし、その頭頂部にシャベルを打ちつけた。
彼の誤算はたったひとつ。
××××は、彼が思っているほど冷酷な人間ではなかった。
心の片隅にあった、仲間に刃を向けることを躊躇う気持ちがいつもよりずっと早く彼の気力を削っていたのだ。
通常なら簡単に見抜けたはずの𓏸のトラップにも気がつけないほどに。
仰向けに倒れ込んだ×××は脳天が熱く燃えるような痛みを感じながら、諦観とともに目を閉じた。
𓏸の手の甲に黒く2の文字が浮かび上がる。
カウントが増えたということは×××の命は、今たしかに潰えたということ。
鮮やかな紅が彼の周囲を彩るように広がっていった。
"紅の記憶"
11/22/2025, 4:13:36 PM