#刹那
あれは、何年か前の夏休みでの出来事。
田舎の祖父母の家に行って、畑作業を手伝った帰り道。
後ろを振り向くと、目を見張るほどの美少年がいた。
肌はほんのり焼けた小麦色で、キリッとした清楚な顔立ちは、夏を思い浮かばせる。
海がよく似合いそうだと思った。
瞬間、君と目が合った。
確かに目は合っていた。
恥ずかしくなり、足を速めて家に戻った。
家に戻って、すぐさまおばあちゃんにあの少年のことを聞いた。
高校3年生の男の子で、近所に住んでいるらしい。
挨拶をよくする良い男の子なんだと。
おじいちゃんにも聞いてみたら、あれは良い男じゃ、と即答した。
祖父母の家をでる時、もしかしたら、来年の夏、偶然会えないかなぁと胸をワクワクさせた。
今年も、祖父母の家に行った。
だけど、おばあちゃんが言った衝撃の言葉。
あの男の子は、自分の夢を叶えるために違う街に行ったんじゃよ。船乗りになるいうて、ボートに乗る研修をしているらしい。船があれば、どこへでも行けるって言うとったなぁ。
膝から崩れ落ちた。ならば、もう会えないではないか。
君と目が合った瞬間は確かに存在した。
だけど、その時間は、刹那の瞬間。
今も、私の記憶の中だけで生きている。
4/29/2026, 12:58:55 AM