カナタ

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『優しくしないで』

高校の時、僕は実の祖父を殺してしまった。

ヤングケアラーである。

当然、人として許される事ではない。

だが、僕は何もかもを犠牲にして、祖父に尽くしてきた。

放課後に友だちと寄り道をして遊ぶこと。
修学旅行の夜、友だちと枕投げをすること。
休日に友だちと遊ぶ約束をすること。
文化祭の出し物をクラスメイトみんなで作ること。
何もかも全て。

なのに、僕はその苦労を全て水の泡にした。一瞬である。

「だって、しょうがないじゃないか…。おじいちゃんがあんなことを言うから…。」

祖父は僕に、「ごめんな」と、一言だけ言った。

いつもなら、「全然大丈夫だよ。」と言えるはずだった。

でも、その日だけは違ったんだ…。

色々な物が積み重なって、気づいたら殺してしまった。

裁判の日。

弁護人「ーーーというように、被告人には情状酌量の余地があることを裁判官に進言します!!」

裁判官「うむ…。では、 被告人に問う。祖父の事を愛していましたか?」

僕「はい…。おじいちゃんはいつも優しかった…。なのに、僕は…!」

裁判官「……。判決を下す!被告人を有罪とし、懲役10年の刑に処す!!」

僕「……。」

当然だ…。優しかったおじいちゃんを、一時の感情で殺してしまったのだから…。それより、もっと刑を重くしてくれ…。僕は最低な人間なんだから…。

裁判官「辛かったな…。一人で老人の介護をするというのは、とても大変だ…。被告人よ。貴方はまだ若い。ヤングケアラーによって、お祖父様を殺めてしまったが、貴方はまだやり直せる。」

僕「……。」

…無理だ。やり直すなんて…。

裁判官「10年は確かに長い。だが、罪を償い人生をやり直すやり方は沢山ある。貴方の10年後の年齢は、20代後半だ…。 やってしまったことの償いはできるが、時間を戻すことなど誰にも出来ん。仕事は、選ばなければいくらでもある。人間働いて、お金を稼げばどこへでも生きていける。」

僕の目からは、涙が止まらなかった。

裁判官「大丈夫だ…。10年間しっかり罪を償い、また…いちからやり直せばいい。」

僕「ごめんなさい…ごめんなさい……ごめんなさい………!」

拭っても拭っても、僕の目からは涙が溢れて止まらなかった。


10年はとても長い。だが、僕の罪を償うには全然足りない時間だ…。

僕は、あの裁判官の言葉を胸に、罪を背負ってしっかり前を向いて生きていく。

それが、僕がおじいちゃんにできる最大の償いだから…。



PS
この話はフィクションです。
どんな事情があろうとも、罪は罪です。10年という時は、少年の青春を奪いますが、人の命には変えられませんからね…。
ほんと、外国人の犯罪で、不起訴になる日本とかどうかしてると思いますね。

5/2/2024, 3:21:09 PM