なツく

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春が終わり陽の光が肌を差す蒸暑い夏の日、青々とした空の下で私は眠る。

それは、とても深く広くずっと拡がり続け自分がこの世界にとってどれほど小さい存在なのかを実感する。

「みな…みなこ…三奈子…」

何処かで私を呼ぶ声が聴こえる。

目線の先にボンヤリと人影の樣なものが写し出される。

段々と視界が鮮明になるにつれ幼馴染みの夕弦だと判った。

夢で仲の良い人や知り合いと会って話したり遊んだりするというのはよくある事で、それが明晰夢になると感覚もより鮮明になる。

脳科学的にとか難しい話は置いて簡単に言うと、[夢を意のままに見れ現実世界と変わらない感覚が味わえる]そんな感じらしい。

「(あぁどうせ夢の中なら夕弦とこのまま、、)」

と明晰夢に酔い知れている自分が馬鹿みたいだと嘲笑う。

「(夢の中だけじゃなく現実世界でも夕弦とこうなれたら良いのにな、、)」

「(ずっと夢の中に居たい。)」

ずっとそんな思いが脳裏に媚り着いて離れようとしない。

夕弦が不登校になって3ヶ月が経ち、その間私は毎日学校帰りに夕弦の家へと立ち寄り持ち物や連絡をした。

「(他の皆は誰も協力しない。誰も、、)」

「(私は夕弦の幼馴染み、ずっと友達だから絶対に助ける。)」

そんな自分は優越感に浸り、知らず知らずの内に

「夕弦の為なら。」

と平気で他者を批難し傷付けてしまう人間に成り果てていた。

いや、ただ

「素の自分に戻った。」

だけか。

夕弦とは幼稚園の頃からの幼馴染みで、私はいつもクラスの端っこの方で夕弦と2人で遊んでいた。

「大人しく優しい性格の夕弦とそれとは真逆の私。」

どうやって仲良くなったのか今じゃそんな事忘れて毎日くだらない会話で笑って遊んで。

「(この先ずっと想い続けても何も変わらない。)」

そうやって自分に何度も何度も言い聞かせ諦めようとした。

それでも、他の誰よりもずっと優しくて、楽しくて、大好きで。

夕弦にはずっと自分を隠していた。

「嫌われるのが嫌だから。独りになるのが怖いから。」

「この想いを伝えたら夕弦は何を思い感じ何を言うだろう。」

徐々に不安が渦となり止まらなくなる。

一晩中悪夢にでも魘されていたかの樣な青冷めた表情でトーストを齧る。

「早くしないと遅刻するわよ。」

と家事をしている母が言っているのが聴こえた。



「(夕弦、明日は学校来てくれると良いな。)」

そして今日もまた、私は眠る。

4/9/2023, 2:34:42 PM