Seaside cafe with cloudy sky

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【あいまいな空】

⚠⚠BL警告、BL警告。⚠⚠

本文ハ某世界擬人化作品ニオケル〈日本←孛國〉ノBLぱろでぃーデアルタメ、各々ヨロシク検討ノ上読マレルコトヲ望ム。尚、当局ハ警告ヲ事前ニ告知シタ故ニ、苦情ハ一切受ケ付ケヌモノトス。以上。⚠⚠











給仕を捕まえて珈琲を頼むと、窗際のテーブルを陣取り足を組んでどっかりと椅子に座りこむ。懷中時計を取りだし時間を確認すれば、約束の時間にはまだ三十分以上も早かった。なんだかめちゃくちゃ待ち焦がれているみたいじゃねーか、俺樣……今更に滲んできた氣恥ずかしさが無意識に顏を奇妙な形に歪めさせる。ああくそ、雜念は消えろ!と氣を取り直すため、ひとつ大きく深呼吸して無理やり自分を落ち着かせた。輕く頬杖をついて窗の向こうを眺めると、どんよりとしたベルリンのあいまいな空。降りそうで降らない、こんな天氣が好きだと、いつかあいつが言ってたな ―― 待ち人との思い出が不意に腦裏をかすめてしんみりと昔を壞かしむ。頃合い良く運ばれてきた珈琲を手に取って口許へ寄せ、しばし香りだけを味わいながら曇り空の街を眺めていることにした。すると。
「あ」
石造りの通りを行き交う人々、その中の異質なひとりの存在を、素早く視界が捕らえていた。おもわずもう一度時刻を確認してみれば約束の時間ちょうど三十分前。お互い時間守んねーなと苦笑しながら、愛すべき我がもと弟子、日本を胸の内で褒めてやった。俺が見える窗にやつが通りかかるタイミングで手を振ると、表情の薄い顏がちらりとこちらに向けられ俺たちの目と目がばっちりと合う。久々の再會。なのにやつは動じた風もなく、さらりと口角で微笑んで見せただけで窗を通りすぎていった。愛想なさすぎるぜー……

「先陣爭いに敗北するとは、無念です」
對面席に着くや、帽子を脱ぎながらの飄々とした第一聲。ここじゃ目立つ黑髮だ、普通の人間には俺たちは見えねーけど。
「俺に勝とうなんざ百年早いんだよ。……ま、華々しく負けた國が言うのもなんだがな」
肩を竦めておどけた自虐を投げる。そして珈琲をようやく一口。
「勝敗は兵家の常でしょう」
脱いだ帽子で若干亂れた髮を指で梳く。そんな些細な仕草すらも目にしただけで、やつへの戀心を自覺してしまった今の俺は徒に心が跳ねてしまう。しかし孫子の教えできたか……食いつきたいが、戰術論議は一切禁止と嚴しくフランスから戒められていたので、氣の利いた言葉が咄嗟に思いつかず卽座の應酬が出來ない。ぎこちなく默ったままの俺に心得たものか、やつの方から何氣ない話を續けてくれた。
「久々のベルリンなので、半月ほど滯在させていただきます。よしなに」
「……俺が呼んだんだ、追い出しゃしねーから、氣のすむまでゆっくりしていけよ」
ありがとうございます。丁寧に輕くお辭儀まで添えて禮を言う。そしてやつのもとにも俺と同じ珈琲が運ばれてきた。
「もともとお會いしに參る豫定でした。先んじてご連絡下さったこと、まことに嬉しき次第です」
俺に對する社交辭令は許可していない。少々澄ましたセリフだが、素直に聞けば、やつも俺にあいたがっていたってことだよな?愼重に事を運べは陷落まで追い詰められずとも、接近戰まで持ち込んで親密度をグンと上げるぐらいなら手堅く達成できるはず。よし、まずはやつの正確な現状分析からだ。
「ネーデルラントから中々動いてくれなかったんで、焦れちまったんだよ。忘れられてたんじゃなきゃ、安心だ」
輕口で徐々に探りを入れていく。……ん?返答せず唇を指でなぞりながら、珍しく俺の顏をじっと見つめてやがる。ソファに、少し氣怠げに身をもたれさせた姿勢で。訝しげに見つめ返すと、クスリと笑ってようやくやつは口を開いた。
「限界まで焦れていただくべきでしたか……訪いのない私に餓えて、思い亂れるあなたの美しくすさんだ姿を愛でつつおなぐさめして差し上げたかった。急いで驅けつけたのは早計でしたね」
惡びれのない殺し文句。カフェで金縛りに襲われたのは初めてだった。
「―― ベルリン、の、次の、行き先、は、あんのか?歸國、は、いつだ?」
氣力を振り絞り、平然を裝ったつもりが、電信文讀むのが精一杯で。やつを見れば、しれっと優雅に珈琲をお召し中だった。
「今のところ、再度蘭國に戻って、そのあとは未定です」
「……なに?」
ネーデルラント。わざわざ戻るってことは……やっぱりただの經由地じゃなかったってことか。フランスは正しかった……しまった、つい素で聞き返しちまった。僅かながら動搖をみせた俺に、今度はやつが怪訝な眼差しを向ける。
「孛國どの?」
こんなときは、ひとまず話題を變えりゃ良い。
「相變わらず、かってー呼び方。ギルベルトで構わねえ、もう大源でも師匠でもないんだからよ」
ウィンクしておどけて誤魔化してみる。やつも野暮な追求などせず、芝居がかった手振り付きで戲れに乘じてきた。
「眞言名をお許し下さるとは光榮至極。では私のことは、わがきみとお呼び下さい」
「卻下する」
まったく、不埒千萬な愛しい化身め。
二人で大いにふざけあったあと、カフェを出てやつの滯在先へと連れ立った。

6/14/2024, 11:59:02 AM