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【飛べない翼】


「今度生まれ変わるなら天使がいい」
そう言うと、神様はちょっと考えるみたいな顔をして、口を開きかけてすぐに閉じた。神様が答えないってことは、そういうことだ。
「ダメなの?」
「たいていは、同じような種類に生まれ変わるね」
遠回しに言うけど、なんとかしてくれるのが神様じゃないの?
「種類って……天使だって、翼あるし。それに同じのはもういい」
「どうして?」
「飛べないってバカにされた。なんのための翼だろ」
「飛べるってことはね、逃げなきゃならない敵がいるってことなんだよ」
「敵、いてもいいもん」
「そうかなあ。敵もいなくて、ご飯が保証されてる生活。いいと思うけどな」
「だからシアワセだっていうの?」
「うん。そうとも言うね」
呑気すぎて、敵を敵だと気づけなくて、滅びたヤツらだっている。それが幸せだっていうのかな。
「何が不満なの。充分可愛い姿をしてるのに」
「違うんだって! 可愛いじゃないの! カッコよくなりたいの! 天使カッコいいもん。空も飛べるし、手も使える」
「そう? 可愛いくなりたくたって、なれないコもいるのにね」
神様はのんびり言うけど、そうじゃないんだ。
「必要ないもの持ってたって、しょうがないよ」
神様が小さく息を吐く。
「それはね、『ないものねだり』って言うんだよ。翼、飛ぶ以外にも、お役に立つことたくさんあると思うけど」
「分かんないよ」
「それに気づいたら、もしかしたら天使にもなれるかもね」


11/12/2023, 9:33:32 AM