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お題「星座」

「ごぜーんにじーふみきりーにぃーっ!」
「ぼうえっ……あ」
 望遠鏡、と言いかけて思い出した。
─オレ、望遠鏡忘れてる。

「ああああーっ!なんで忘れてんだよっ!オレ!」
 チャリを漕いで1時間と数十分。月が煌々と輝いている丘の上。雲一つない、最高の天体観測日和のはず、だった。
「ほんとごめん!」
「まあまあ……星、見てみ?」
必死に頭を下げるオレをよそに、こんなに綺麗だぜ?と笑って、岡田は空に指を差す。
 こんなときでも平然としてられるのはコイツのいいところだと思うけど、今は平然としちゃダメだとも思う。
「綺麗だけどさ……元々月見に来たわけじゃん、月の観察レポート出そうって」
 レポート、というのは、所属している天文部の課題だった。

 文化祭で出す、自由研究。オレはめんどくさくて何も手を付けていなかった。だってやる気もあんまりないし。でも、部長に詰められる方がもっと怖かった。
 昨日、とうとう締切に追われる焦燥に耐えられなくて、僅かな期待を胸に、岡田へと電話を掛けた。2コールのうちに繋がる。一息ついてから話し始めた。
「なあ、岡田。」
「おーなんだ大田?珍しいな、お前がかけてくるなんて。どした?」
「─お前、課題のレポートやったか?」
「レポート……?」
 そんなわけで、2人で課題をやることになったわけだ。

「あああ!部長に詰められるーっ!」
 どうしようもない悲しみにジタバタとのたうち回っていると、すぐそばに岡田がいるのを感じた。そういや、なんか静かだな。起き上がって岡田を見ると、オレは息を呑んだ。
 半裸だった。ヤツは。
「大田大田、見て、お腹七星」
 岡田のお腹には、赤い◯が7個描かれていた。微妙に位置がズレている気がするけど。
「……」
「ほい」
 言葉も出ないオレにお腹七星を描いたであろう赤いマッキーを手渡すと、岡田は背中を向けた。
「……!!」

「お腹七星とストロベリームーンの観察……?」
部長はじっとオレ達の共同レポートを眺めている。
「フフ、声も出ないでしょ?コイツ、なかなか絵心ありますよね……」
 脇腹を突かれ、くすぐったさにちょっと笑う。
「よせやい、照れるっつーの」

 その後、部長と顧問にしっかりみっちり絞られたのは言うまでもない。

10/5/2024, 1:20:35 PM