お題『星空の下で』
まるい、まるい、お月様。
うさぎがちょこんと丘に座りながら見上げている。
「僕はあのまるいお月様から生まれたのかな?」
「…」
お月様に問いかけても返事はなかった。
ぴょん、ぴょん、ぴょん。
「ねぇねぇ、すすきさん。僕はどこからやってきたのか知らないかい?」
「……」
すすきはただただ風に揺られていた。
ぴょん、ぴょん、ぴょーん。
「ママ〜。あそこにかわいいうさぎしゃんがいる!」
「本当だねぇ。可愛いうさぎさんだねぇ。」
「パパ〜。うさぎしゃんに良い子良い子してきてもいい?」
「良いよ。ただ、あまり遠くへ行ったらダメだよ。」
「は〜い。」
小さな女の子は嬉しそうにうさぎの元へ近付いた。
だが、うさぎは警戒心剥き出しで怯えながら見つめた。
“ヒトだ…。きっと僕を捕まえようとしているんだ。逃げなきゃ。”
「あっ!待って!うさぎしゃん!」
小さな女の子は夢中になって追いかけた。
ぴょん、ぴょん、ぴょーん。
その様子を微笑ましく眺めていた両親は丘の上に寝転んだ。
「今夜も月が綺麗だね。」
「そうね。私はあの星が好きかなぁ。」
「僕はあの星が好きだなぁ。」
気が付けば時間を忘れて会話をしていた。
ただ、さっきまで娘の声が聞こえていたのに全く聞こえてこなくなった。
辺りを見渡して焦る二人。
探しても探しても娘の姿はなかった。
お月様は相変わらず穏やかである。
「大丈夫だよ。君たち二人に代わって僕が女の子を良い子良い子してあげるから。」
ぴょん、ぴょん、ぴょーん。
寂しがり屋のうさぎは小さな女の子を拐ってどこか遠くに消えていった。
綺麗な星空ばかり見ていちゃ近くにある大切なものまで見失う可能性もある。
たまには足元にある小さな花にも気付かないとね。
小さな花にはたくさんの涙が零れ落ちていた。
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※なんとなく浮かんだフィクションの物語です。
4/6/2023, 9:30:45 AM