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凍てつく鏡

日差しが窓から差し込む。
ベッドから起き上がると、窓から雪が降っているのが見えた。昔ならはしゃいでいただろう。だが、今は寒くて降って欲しくない。
「初雪…かな。」
呟くも返事はない。
郊外に小さな一軒家、電車で毎日仕事へ行く。
雪であれ、仕事はある。
寒くてベッドから出たくはないがなんとか出る。

電車から見る景色は、真っ白で別世界みたいだった。
少しだけ子供の頃のワクワク感が私の身を包む。

会社につき、いつものように仕事をしている。
憧れの上司に声をかけられる。
嬉しくて、笑いかけながら返事をする。
「はいっ!なんですか…?」

「あ、大したことじゃなくて。自分ごとなんだけどね。」
と続ける。それに、何か嫌な予感がした。

はにかんだ顔で私の同僚を指差し
「結婚するんだ、あの人とね」
その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。
咄嗟に後退りをして、俯いてしまう。
ぱっと顔を上げ無理に笑い
「おめでとう御座います…!お似合いですね」
と思ってもないことを言う。

憧れの人が、。憧れなんて言う言葉で誤魔化していたのかもしれない。
今更ながら、そう思った。
もう、気づいても遅いのに。

「それで、明日お祝いで少し食事に行きたくて。明日どうかな?」

憧れの人からの誘い。それは嬉しいはずの誘いなのに、胸がどうしようもなく痛む。

「はいっ!行かせていただきます!」

気持ちに反して、言葉は前向きなことしか言えない。
私は何を話したのか…もう、ほとんど意識がなかった。

そこから仕事は手につかなかった。
退社後、寒空を1人寂しく歩く。

家に帰るのも、一苦労で。
体がだるく言うことを聞いてくれない。
玄関をなんとか閉めて、ベッドに縋る。

鏡に映る自分の顔は、思った以上に酷かった。
涙の後で目元が赤くなり、悔しそうな顔をしている。

「馬鹿みたい…」
そう、呟く自分に嫌気がさした。

何も解決なんてできない。
どうしようもない苦しさに、。

鏡に映る自分を撫で…ガラスを破る。
血が滲み、痛みが走るが鏡を見続ける。
反射し、部屋に光が広がる。

もう、使うことのできない鏡外に出す。
外に出ると、頬に風が触れ寒さで頭がぼーとする。
ガラスの破片が、部屋に落ちる。
外は雪で、どこもかしこも真っ白だった。

「…」

幸せになれない私は、ただ虚しさを隠して。
「明日は大事な日だから。」
なんとか、笑う。

明日には雪が溶けているだろうか…。

容赦なく雪が降り、冬は続く。
寒空に凍てつく鏡が、ただ空を反射していた。

私の好きな人の幸せは私の幸せのはずなのに。

「…ねぇ、なんで。」
私の虚しさは、雪のように降り積もる。

12/28/2025, 10:11:56 AM