雨が降ってきた。
ラムネの瓶をこぼしたような雷雨。
今日は友達と遊びに行く予定だったのに
これじゃ行けなさそうだ。
傘も忘れてしまって、最悪の気分だ。
好きな人は昇降口で佇んでいる。
私の親友とずいぶん長話しているみたいだ。
好きな人はペコペコ頭をさげて
懸命になにかをお願いしてるみたい。
その親友は傘を持ってそのまんま帰っていった。
私の中で、悲しい現実が脳裏をよぎってしまった。
「好きなひとは…親友に相合傘してほしいってお願いしに行ったのかな…」
考えただけで涙が溢れそうだった。
家に帰って泣きじゃくろうと思ってたの。
そしたら親友が
傘を貸してくれた。
「アンタ、愛されてんね。」
親友に愛されても意味がない。
好きな人が話しかけてきた。
「傘忘れちゃったから、傘に入れてくれないかな?」
なんて…
馬鹿らしい。
先程あんなに親友にペコペコ頭をさげて
相合傘をねだっていたくせに。
「うるさい!」
きつくあたってしまった。
もういやだ…
自己嫌悪と悲しみに苦しめられながら
走って家に帰る。
すると途中で親友に会った。
…羨ましいな…
ぼーっと見つめながらてくてく歩く私の顔を
じーっと見つめて、
親友は驚いたような顔で話しかけてきた。
「アンタ、アイツと相合傘しなかったの?」
何を言っているんだろう?
アイツが好きなのはこの子なのに。
するとその子は
私にびっくりした表情で告げた。
「アイツ、アンタと相合傘したくてわざと
私に傘貸したんだよ。
ペコペコペコペコお願いしちゃってさ。
もったいないなー…」
…もしかして、傘を忘れたって…
親友に貸したから?
ぐちょぐちょした気持ちと
喜びの混じった心で、
アイツの元へ向かった。
#相合傘
6/19/2023, 10:13:40 AM