今日にさよなら
今日も雨ですか?今日は、良い日になりましたでしょうか。あなたの住んでいる場所は、私からはあまりに遠いので、こうして誰かに託しています。あなたのところは、いつだって雨が降っているとお聞きしました。私が住んでいる場所も雨が多いところではありますが、季節によって差があることが常で、あなたのところのようにいつも雨、と言うことはあり得ない場所でございます。あなたが私のところにいらして、そして帰ってから、もう何年になるのでしょう。また来るよ、と言ったあなたは、この10数年、一度も此方に戻ってくることはありませんでした。私が、一体どの様な思いであなたをお待ちしていたか、あなたには決してわかりますまい。それほどまでに、私はあなたともう一度会い見えることを楽しみに、首をありったけ伸ばしてお待ちしておりました。ですが、あなたは来なかった。きっとやむを得ない事情があったのだろうとは思いますし、あなたの立場だってそれなりに存じ上げているつもりではございます。ですが、この10数年、便りのひとつもないと言うのは些かひどいのではないでしょうか。しかし、今日、この眠りやすき日に、長い夜の中までこの話を持ち込むのは無粋というものでしょう。ですから、私から始めた話ではございますが、一旦は短き世のこと、いっときの事として水に流しておきます。10数年など、長きを生きたあなたからすれば瞬きの合間なのでしょうから、あなたがこれをお読みになった時に、お返事を頂戴したいと思いますので、何卒ご返信いただきますよう、どうぞよろしくお願い致します。それではどうかお元気で。全ての禍根を今日に残して、恨みに別れを告げられることを願います。
あなたのいっときの友、蒼葉。
2/18/2024, 1:40:22 PM