ぬるま

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タイムラインでいつも投稿が流れていた。
日常生活や好きな趣味について呟くアカウントだった。
同じ趣味を持っていた私はsnsを始めてあまり長くなかったから、フォローと、気に入ったつぶやきにいいねだけをして、そのアカウントとはそれだけだった。

多忙になり、snsに全く手をつけない時期が続いた。
そのアカウントのことだって忘れていた。
久しく時間が取れた時、ふとsnsのアプリが目についた。アプリのアイコンが変わったことだって分からなかった。

そういえばどんな投稿をしてたかな、とアプリを開いた。

タイムラインに軽く目を通し、自分のホームへと移動する。私の投稿は本当に少ないもので、たぶん200も無かった。だから、昔のことを懐かしみながら読んでもそんなに時間は経たなかった。

続けていいね欄を見た。
すると記憶にあるよりも少ない投稿に違和感を覚えた。何故だろう、と戸惑いながらもいいね欄も全て見終えた。
そういえば、彼らは今どうしているだろう、とフォローをしているアカウントを見ようとした。
アイコンの左下に表示されるフォローの数が減っていた。

「あれ、」
動揺を隠せなかった。
フォローしたアカウントの数が多いわけではないから、数はきっちり覚えていた。16個だ。16。なのに表示は15フォローになっている。

画面を指でなぞる。
登録したアカウントを上から順に辿っていく。
好きなアーティストやコスメのアカウントは残ったままであるものの、その中に混じっていたはずのあのアカウントがなかった。

「嘘。」
あのアカウントは1日に何回か呟き、かなり熱心に投稿していた。フォローのところで流れた投稿がまたタイムラインで流れる、なんてザラだった。バイトを頑張って趣味に当てているとか。資格勉強が難しいとか。
私も資格に向けての勉強が辛い時、画面の向こうでどこかの誰かが頑張っていることを励みにしていたのだ。
それすらも、なかった。
なにも。
あのアカウントの痕跡は残っていなかった。

「え?」
知っているアカウントが消えた。
それだけだ。
だけど、見慣れたアカウントが忽然と消えたのは、初めてだった。まるで友達が知らないうちに転校して行ったようだった。

私だって、snsが個人の自由で使われていて、アカウントを消すことだなんて、その人がその気になればいつでもできることだと理解している。それでも、あのアカウントは今どうしているのだろう、もしかしたら復帰したりして、と。アプリを開いてあの膨大な数のタイムラインに流れてないか、ゆっくりスクロールして探してしまうのだ。


2024 1/20(土) 1『君に会いたくて』

1/20/2024, 7:27:50 AM