みこと

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「みこちゃん!一緒に帰ろー!」
笑顔の彼女が私を迎えに来る。小さく頷いて、彼女の元へ向かう。
「ハル、待たせちゃってごめんね。」
「待ってないよ!早く帰ろ、バスが来ちゃうよ!」
私の手を掴み、走る彼女の横顔を盗み見る。走っているせいか赤らんだ頬、少し開かれた口、靡く薄い茶色の髪、魅力的だった。
「みこちゃん!あとちょっと!頑張れ!」
疲れの滲む彼女の顔、西日に照らされて輝いている。
「うん」
単調な返事を返して、前を向くともうバスはすぐそこだった。2人手を繋ぎ、ぎりぎりで滑り込む。
「あっぷなーい!なんでいつもぎりぎりになっちゃうんだろうね?」
笑いを含む彼女の声につられて笑みが溢れる。席に着くと、彼女の頭が肩に触れる。胸の高鳴りを覚える。オレンジに照らされた車内、彼女がやけに色づいて見える。こっそり、彼女の髪にキスをした。
「ハル、着いちゃうよ。起きて」
彼女が目を覚ます。なんだか寂しい気がする。
「おはよぉ」
でも彼女のこの声を聞けるのは特権だと思う。頭を軽く撫でてあげると、嬉しそうに笑う。
「ねぇ、帰る前にどこかでご飯食べない?」
魅力的な誘いに思わず頷く。
いつもどおり、手を繋いで、一緒にバスに乗って、一緒に帰る。そんな日常が崩れてしまわないように、私はそっと好きに蓋をした。

3/11/2024, 11:08:28 AM