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もっと知りたい

…ア。…ア。

店内放送のスイッチが入り
主催者のマイクテストが始まる
店内放送、といっても普通の店内放送ではない
普通が分からない奴ら達の店である
当たり前など通用しない
そんな当たり前がなくなる合図の店内放送だ
場所を借りているというわけでもない
無断でやっている。
晒し上げが今始まる。

お待ちかねの皆さん!
今宵も縛り上げ晒し上げていきましょう
今日の晒し上げはこの小娘になります!
まぁまぁ拍手はその辺にしといて
晒し上げるのに拍手とか、皆さま相当イッておりますね
さすが童顔が好きな国なだけありますね
ブーイングとナイフはそこまでにしてください
一応、ここ他の人の店ですからね
汚すわけにはいきませんので
それではスターのご紹介に参りましょう!
さぁこちら図体も小さい脳みそも小さい小娘です!
お〜。中々に人気がある様で。
さすが童顔支持大国とでも言いましょうか
ガムテープがよく似合うこの小娘に質問でもしていきましょうか。
夜のパズルピースはどうだったですか?え?ああ。まだしてない、と。左様ですか。
データとして全て貴方のことは記録されているんですよ
貴方について知らない事はないとでも言っておきましょうか
ウエッ、くさい言葉を吐いてしまいましたね
あれ言ってませんでしたっけ。私、くさい言葉アレルギーなんですよ。
なにかモゴモゴと言っていますね
猿轡の方が良かったでしょうか、生憎、猿轡の在庫が足りなくてですねぇ
これはすみませんでした
やはり最後の眠りですし好きな方を選びたいですよね。

さあさあこの小娘の愚かさを大画面で見ていこうではありませんか

カチッ

モニターの電源が入る
観客達はモニターの方を向いた
主催者はそれを自分が前と言ったら前を向き死と言えば自死するのだと考えて愉快な気持ちになった
そこには少女と思われる人影と少女が写っている
横の文字は心の声を映し出したものである
少女は次にこう言った


…知りたい知りたい知りたい。
「もっと知りたい!」あなたを知りたい。

「あほくさ。」くさすぎるだろその言葉

「え、」ただ知りたいだけなのに

「…」しょうもな。

「ねえなんでそう言うこと言うの」悲しい

「なんでだろうね」言うと思った。気持ち悪りぃ。

「ちゃんと答えてよ!」ねえ。なんで。

「…うん。そうだね。」始まった。だる。

「もういい」なんで分かってくれないの?
「そっか。」もういいよ

主催者が動画を止めた
そして何秒か静止した後、大きな笑い声が会場中に轟いた

「…フッ、ックク、…ッ。
……ッ゛フ゛ハ゛フ゛ハッ゛フハッ、フフフ゛ッ!!
…ッハ、これは失礼。
いえ、余りにもしょうもないので笑いが込み上げてきて、フッッ…!」

主催者は大笑いした
少女の愚かさに少女の綺麗さに。
妬む程の純粋さはもう無くなっていた
それを生き甲斐として生きとし生けるものには面白くて仕方ないのだ
腹を抱えて笑っていた
おかしくてたまらないのだ。少女の綺麗さと純粋さが。
自分にはどうしたってなれないから否定などの域にいないのだ
どうしたってなれないそれを当たり前としてやっているのが面白くて堪らないそんな様子だ

ガムテープを口に貼られ目隠しをされて吊るされた少女はブルブルと身震いをしていた
出ようとしているのだろう
けれど出られない
何故なら、ここは何もかも通用しない

「愚かだと思いませんか?
思う、思う、思う、思う、…ックク…ッハハ!!
やはりそうですよね!こんな純粋なのは愚か極まりない
そのうちレイプでもされて虐殺でもされるでしょう。
けれど警戒心のかけらもない!!ッ…ハハ!!」

主催者の高らかな笑い声と演説と言われても違和感がないくらいに力の入った言葉が響き渡る。
観客達もそれに同調する
ここはそれが普通でありそれが悦楽を感じる一つの手法である
ガムテープの少女は恐怖か苦しみからか涙を一筋溢した

「…フフッ!…クッ!フッハハ!!
泣いているのですか?皆さんこの子泣いております。
人生迷い子センターにでも連れていきましょうか。
迷子になったら届けるのでしょう?迷子センターに
そんなものがあったら私は生まれてすぐに迷子センターに行かなきゃなりませんね
…フックッ、フッハハハ!!
そんな物があったら他の企業などが倒産続きになりますね。フッ。フフ。
なんてご冗談ですよ。皆さま
涙なんてただの体液。人間などカルシウムと臓器と菌の集合体。」

観客達は歓声を上げている
観客達はいつもの主催者に安心するが
その安心は自分たちと同じだという同族愛好からくるものである
同族嫌悪の逆だ。

「知ってどうするんです?知って傷つけられたら知らなきゃ良かった思うのでしょう?
なら最初から関係を持たなければいいじゃありませんか
友達を作らないというのも策ですよ
というか友達ってなんです?
友達っていかにも安くてくさい言葉って感じがしますよ
金は掛かるし面倒なだけじゃありませんか?」

「ああ。後、君のお仲間のなんでしたっけ
リン酸カルシウムちゃん?でしたっけ
ああこれは骨の成分でしたね
その子からご依頼頂きましたので開催しています
お手紙もついております。
被害者ブリコへ
いつも被害者ぶって正義感振りかざしているのが嫌いでした
主人公ぶってもお前は脇役だよ
さよなら。もう会うことないよねとの事でした
まぁこの子には私が路上で声をかけたのが始まりでしたが。
ああなんでもありません。カルシウムはカルシウムらしく黙ってればいいんですよ」

「ン゛ン゛ー!!ン゛ン゛!!ン゛!!」
少女は絶叫した
今まで信じていた友達がそんなことを思っていたこと
勢い任せに言ってこんなことになってしまったこと
その子にお金を返していないことなど思い当たる事は幾つもありました。
友達にこれを主催してほしいと頼まれたということはそれ程、嫌われていたということの証明であり
裏切りを意味する
少女はここまでの事だと思っていなかったのだ。
なんてことをしてしまったんだと少女は後悔し激しく声を上げたのだった

「おっと。まだ朝ではないのですけどね
ああなんだただのカルシウムか
余りに五月蝿いのでニワトリかと思いました」

少女は友達とはどういうものかということと
助けてほしいという主張をしていた
けれどガムテープ越しの思いは何も響かない上に届かない

「ン?お母さんが親子丼にされて僕はからあげにされそうだって?ああこれはニワトリの話ですよね。
あまりにも貴方が五月蝿いのとガムテープがクチバシに見えたもので。
ン?全然違うってこれは失礼。
まぁ人肉と鶏肉かの違いですからどちらも同じでしょう」

「まぁもうすぐ鶏肉と同じ状態にされますけど」

観客はより一層盛り上がりを見せる
揚げて唐揚げにしろーという歓声やチキンにしちゃえーという歓声、タンドリーチキンをご所望の者もいた

「まぁまぁ私、チェーン店ではないので調理と注文から何まで時間が掛かるんですよ。ちょいとお待ちを。」

それではこの包丁を使って
肉料理を作っていきます
タンドリーチキンと唐揚げどちらも作りましょうか
それでは包丁を試してみましょう。
スッースッ。スー
少女の腕に線ができたパックリと割れている
脂肪層が見えていた

「ン゛ッ゛……ッ゛」
と少女は小さく喚いた
少女の腕から止めどなく血が流れる
もう一度、血潮を感じようとしたところ
なにやら入口の方から声がしてきた

「何やってるんですか!」
「許可は取ってるんですか!」
と入口で騒いでいるらしい
扉を開けた瞬間、観客達は一目散に逃げていった
主催者は少女を吊るしたまま後にした
主催者は手袋をはめていたので指紋もついておらず素顔もわからずで捕まえようがなかった。
そこは廃墟になっていたが数年前に新しくなり今は貸し出している状態だその場所を無断で使っていたというわけだ
主催者達も皆、仮面をつけており素顔は分からない
少女は血を流しているところをそこの職員に保護され怪我の処置をされた
少女は後に春を売ることになったらしい
まぁこの世はゴシップ好きがうじゃうじゃしているので
本当かどうかは定かではない
少女の友達はあれからもう二度と会っていないらしい。
一体、少女に恨みを持つ人は何人いるのか
そして君に恨みを持つ人も何人いるのでしょうね。


知りたい








知らずに寝れていた頃の方が遥かに幸せだったと後に思うだろう
知ったら幸せだと思えることが全部ではないということを肝に銘じて明日とやらを生きてみればいい
責任は全く持って負うつもりはないが。

3/13/2024, 7:51:40 AM