意味がないこと
結婚して50年が過ぎて尚、私達夫婦は「夫婦」をしているの。
今日あったことは話さない、お互いの仕事のことも趣味のことも。若い頃から休日は別々で過ごしていたから、互いが何が好んで何をしているのかわからないのよ。
「おはよう」「おやすみ」「日曜から出社だ」「お風呂沸いたわよ」「いただきます」「ごちそうさま」
これが私達の会話。それ以外は一言もないわ。
元々、彼には結婚願望などなかったの。私の一目惚れで結婚を押し迫ったのよ。私の両親にも紹介したし、断れなかったんじゃないのかしらね。
彼はまだまだ遊び足りない様子だったし、言い寄る女も絶えなかったから当然と言えば当然かもしれないわね。
まぁ、それは今も変わらず、遊びは止まらないけど。
ひどい時は愛人を家の近くに住まわせていたこともあるのよ。着替えもご飯もそっちで済ませて、夜になったら「疲れたなぁ」って寝るのよ。どうしようもないクズよね。
散々悩んで離婚なんてしょっちゅう考えたわよ。だけどね、離婚に意味はないことに気づいたの。
夫婦生活など元々なかったのだから、結婚なんてしてないも同然なのよ。今になって騒いだところで相手は痛くも痒くもない、最初から私のことなんて見えてなかったんだから。
どちらが先にこの生活にギブアップするのかなと思ってたけど、決着つかないみたい。この歳になって我慢くらべも老い先が見えてきたわ。
ここまで別れずにきたからには、相手より長く生きることを目標にしているのよ。
1日でいいわ、絶対にあの人より長生きにしたいの。あの人のいない人生を送りたいわ。
_________________
これは、ずっと前に雑誌で見た何処かのご婦人のインタビュー記事。
こーゆー生き方もあるのだと考えさせられたってハナシでした。
end
11/8/2024, 11:35:15 AM