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正直諦めていた。貴方はとうの昔に忘れていると思っていた。
小さい頃に約束した、大きくなったら真っ赤な薔薇の花束を持ってプロポーズして。と言った私の言葉を。
必ず迎えに行くよ。と笑顔で言ってくれた事を忘れた日はなかった。
だけど大人になり年齢を重ね、可能性も段々と薄れ、諦めるしかない。そう思った。
だけど、

「約束通り迎えに来たよ、俺と結婚してくれ」
膝をついて両手で抱えるのが大変なくらいの真っ赤な薔薇の花束を差し出して
「遅くなってごめんな」
そう困った顔で謝る貴方に、私は薔薇の花束ごと抱きついた。


ありがとう、覚えていてくれて。



『正直』#8

6/3/2023, 10:00:42 AM