哀れな悪魔

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クライ、フカイ。そんなココはどこだろう。なにも見えない。ただ、『雫の音』のみが木霊し静寂を飲み込む。これが夢であればどんなに良かっただろう。でも、何も知らない。何もわからない。何もいらない。そんなループしそうな思考の中雫は一定の速度で落ちてくる。私はなんだろう?
 いくらかたった時間は変化をもたらす。今度は視界。雫が自分をすり抜けて見えることのない底に落ちていく。ただし、音がするのは一定のままだった。ここで自分は目を開けていたことに気づく。ただ、もう疲れた。私は思考を続ける。自分は何をしていた?
 次はもうどれぐらい経ったかもわからない時。次は触覚。手足は付いている。僕は少し歩く。すると、景色が変わった。そこには大量の黒い何かがあった。触ってみると冷たく、異臭を放っている。そして、もう一つ。それを見た瞬間一瞬自分はよろけた。そこには【不適切な内容】があった。僕は一体何を【不適切な発言】?
 

 -------- あなたは一体何をしたんだ----------

  自分はそこにいて全てを見ていた。私は隠れるので精一杯だった。僕は絶望していた。定まらない。概念が。存在が。そうさせたのはあいつだ。白衣を着ているヒョロイが不敵な笑みで笑いながら体を刺していた男。そして刺されていた人物が紛れもない男で自分自身であること。わからない。そこで理解する。記憶がない。どうして。自分は何も知らない。どうなっている。女性の体つきの自分と顔がぐちゃぐちゃにされた自分がソコにたって笑っている。白衣の男と同じように。そして、三人は自分に近づいてくる。やめて。何も知らないのに。何もわからないのに。何も【モッテナイノニ】。もし、終わりを告げているのなら自分は目覚めるまでに……。自分の意識はそこで暗転する。
 無機質な機械音が木霊する。そこには白い天井が入ってきた。扉の開く音がする。看護師が自分が起きたことに気づいたのか。慌てて先生を呼んでいる。嗚呼、どうして目覚めてしまったのだろう。自分は目覚めるまでに記憶を知りたかったのに。何も持っていないから。自分の人生は途中からだったから。そんな中、靴の音が近づいていることに気がつく。扉の方を見る。頭に激痛が走る。自分は親に殺されかけた。紛れもない白衣を着た悪魔に。そいつはそこに立っていた。こちらを見るなり広角を高くに上げる。そして、今までの自分の記憶をそいつは一言で言い表した。あれは夢ではなかった。男は言った。
「はじめまして、【哀れな悪魔さん】」
そいつの顔は酷く歪んでいた。

8/4/2023, 1:03:37 AM