私の家は少しだけ高い山にある。
おじいさんと2人暮らし。
親に捨てられて、家もご飯も何もない私を拾ってくれた。
おじいさんは若い頃旅行するのが大好きだったんだって。
写真を沢山見せてもらった。
大きな滝に珍しい動物、とっても美味しそうな料理。
今では腰が悪く長く歩けないから行っても山を降りてすぐの小さな街くらいだが。
いつか写真で見た場所へ行ってみたいと思った。
ある秋の冬が近づいてかなり寒くなってきた日、おじいさんは静かに息を引き取った。
もうかなり歳だったから無理もないだろう。
そして次の春、私は大きめのキャリーケースに服や食べ物を詰め込み程々のお金も持って家を出た。
しっかり鍵も閉めたし、おじいさんの遺品のひとつであるカメラも首にかけた。
私はこれから旅に出る。
写真でしか見たことがない、遠くの街へ。
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『遠くの街へ』
2/29/2024, 6:37:08 AM