「寂しさ」
前方から吹く寒風が、目を切り、耳を焼き、腹を撫でる12月。不織布のマスクが検閲した心細い空気だけで、僕は息をしていた。
過不足はなく、何ほどのこともない。そう納得しつつあった。現状に満足しようと心に決めたのはいつのことだったろうか。幸せではなかったのは間違いない。
思うだけで一向に過程も結果も作らない僕自身に、僕は危惧したのだ。何かを成し遂げたい、その為の努力をすべきだ。しかし僕は動かず、スマートフォンのもたらす宛のない暇つぶしに時間を犯されてしまった。そしてそのうちに考え直したのだ。「幸せは獲得するものではなく感じるものであり、幸せになることを目標にするのは現状の不幸せしか齎さない」と。
それは僕に幸せを感じさせたが、同時に僕は停滞した。僕は目標を持つことをやめ、努力することを怠り、日々を暇つぶしに埋め幸せを感じるようになった。
しかし僕はふと思うのだ。
それは寒風が後ろから吹き付け、背中を叩き耳を焼き、首筋を逆撫でする瞬間に。
自分は不幸せであるべきではないか?
つまり、何か成し遂げるべきではないのか?と。
自分が何者かであれば、燻る火はその勢いを増し、なにか事を起こしただろう。
ただ矮小な僕は、この筆を置いて何も起こさない。
その不幸せにすらなれない矮小さこそ、寂しさではないか。
12/20/2023, 7:23:14 AM