Nanase

Open App

子供達の駆け回る声、親同士の井戸端会議、学校帰りの女子高生の愚痴り合い、自動販売機の作動音。
普段気にしない雑音ともとれるそれが、やけに鮮明に、そして綺麗に聞こえる。
ぼんやりとベンチに座って木漏れ日を見つめる。冬場にしては暖かい日だ。あとで飲み物でも買ってこようかとポケットをまさぐるか、その手は空を切るばかり。そうだ、何も考えずに家を出たんだった。

それでも、なんか良いやと思えてしまうのはやっぱり柔らかな光が身体を包んでいるからだろうか。

嫌な事を忘れ去れる訳じゃない。涙が渇くわけでもない。酷く優しい太陽の下では、光に甘えて自分という存在が消えてしまうような気がした。

#太陽の下

11/25/2022, 11:11:53 AM