窓の外には灰色の空と霧に沈む田畑。遠くの電柱がゆっくりと後ろへ流れていく。窓の外を見続けていた。列車の速度に、時間は引きずられない。自分の顔を映していたはずの窓に、いつのまにか知らない景色が流れる。夜はほどけていたらしい。世界は音も気配も無く目を覚ます。
知らない駅を通過した。駅のホームに立つ人の影は、どれも同じ方向を向いて、どれも違う時間を見ている。その人それぞれの心情も事情も目的も知ることは無いが、確かに存在している。だからこの列車は走っている。
いまはただ、この音に身を任せていたい。誰かの夢の中を横切るように。目を閉じても続いていく旅を、確かめながら。
9/30/2025, 1:57:22 PM