「希望なんてさ、別に一つじゃなくても二つでも三つでも、好きなだけ持ったらいいと思うんだよね」
そう言ってあいつは笑った。
俺は呆れて、思わず、
「相変わらず……は欲張りだな」
苦笑混じりに言えば、続けて、
「欲張りだっていいじゃないか! だってほら、見てよ! 夜空だって星が多い方がきれいでしょ」
あいつは変わらず笑みを浮かべたままどこかの物語のようなセリフを吐いて空を見上げた。その言葉につられて俺も見上げた空は確かに星が沢山輝いていて、キレイで――。
――暫くしてあいつが死んだ。
…………暗い夜道を一人ぶらぶらと歩く。
目指すべき北極星もなく、ただ冷たいアスファルトに視線を落として。
大切な友人が死んだからといって、『世界が一変した』なんて大袈裟な事は言わないが、それでも世界は随分暗く色褪せた気がする。
毎日がひどく冷たく空虚で退屈で、静かなのにとてもうるさい。
――だってほら、見てよ! 夜空だって星が多い方がきれいでしょ
一陣の風が吹き抜けた時、ふとあいつの声が聞こえた気がして思わず空を見上げた。
頭上にはあの時と同じ無数の星の瞬く空が広がり、星一つ一つの光は小さくてもそれはとても綺麗で、
――死んだ魂は星になるというけど……
柄にもなくそんなロマンチシズムなことを考えて、でも滲む視界の先に広がる星々のどれか一つがあいつだとしたら……。
ただ下を俯いているよりも、たまには顔を上げて探してみるのもいいかもしれないな、と、涙が溢れた。
3/2/2023, 1:47:02 PM