みこと

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ずっと1人で生きてきた。両親ともに失ってからずっと。そのうち、感情も五感も落としてきた。心はぐちゃぐちゃで、全てを失ったように、色のない世界に1人立っていた。
そこに君が現れたんだったかな。それで私の世界は色づいたんだよね。
「なぁ、これめっちゃ良くない?」
っていつも笑っていた君の顔、忘れられないよ。
初めて私のことを話した時、君は泣いてくれたよね。辛かったね、って。いっぱい耐えてきて偉かったね、って。私もその言葉で泣いたっけ。ほんとに頑張ったなって思ったよ。ありがとう。
君はほんとに誰かを救うのが上手で、苦しんでる人を笑顔にしてたよね。君はほんとにヒーローだ。泣いて泣いて、君は優しく撫でてくれた。大好きだった。

なのに、君は私を置いていくの?
トラックが迫る。見ているしかできない。
あぁ、死ぬのか。直感で思う。
目を閉じる。
身体に衝撃。でも、トラックほど重みはなくて、ちょっと違う。
道路に転がる。少し擦りむいた。
自分のいた所を見る。彼が転んでいる。
「ねぇ、どうしたの?ねぇ」
信じられない。信じたくない。なんで、なんで…
「あああああああああ!!!!!!」
とめどない涙。溢れる悲鳴。
君はもう冷たい。
大量の血が彼の制服を染める。

君は、私のとなりでずっと笑ってくれる、そう約束したのに。約束のリボンは解けて放たれる。ごめんね、ごめんね。救ってくれた君の最期はあっけなく散った。

君と、来世で、となりで、またとなりで、笑えるのなら。それまで私は君の分生きれるかな。

3/13/2024, 1:55:55 PM