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梅雨
しとしとと透明な雨が肩を濡らす。少し生ぬるい雨は徐々に空に広がり暗い雲の上から容赦なく降り始めた。人々はみなそれぞれの傘をさしはじめ、早足で去っていく。通りがカラフルに色づき、先程よりも街の喧騒が遠くなった。傘のない私は高架下へ潜り込み、雨を凌ぐこととなった。過ぎていく人を眺めながら雨が止むのを待っていた。
 するとそこにぴょんと小さな生き物が飛び込んできた。濡れた体を震わしながら顔を上げる。猫だった。この子も雨を凌いでここまで来たのだ。猫はちょこんと座り込み小さく欠伸をした。2人はまた、雨やみを待った。暫くしてひとしきり降った雨が上がった。猫はにゃあと一声鳴いて茂みに消えた。私も、歩き出す。この梅雨の季節に、偶に傘を持たずに出かけてみよう。また、あの子に出逢えるかもしれない。雨が上がって妙にキラキラと輝くアスファルトを見ながらそう思った。

6/1/2024, 10:55:56 AM