クレハ

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子どもが消えた公園。
いや、別にシリアスな状況とか最近問題になっている『公園で子どもを遊ばせるな』とかいうトンチキ理論の被害公園というわけではなくて。

現時刻は18時。
いくらまだ明るいと言っても公園で遊んでいただろう子どもは家に帰っている時間だ。

夕焼けの赤い光に照らされた公園の遊具。
幼いころと比べて極端なほど安全に、もっと素直に言えばつまらなくなった遊具たち。
それが悪いことだとは思わないけれど、小さな身体で怪我も気にせず駆けて登って怒られた日々は何故か誇らしさがあって、やはり寂しいと感じるのだ。

「あ、ジャングルジム!懐かしいなあ」

公園の自動販売機で買った飲料を飲みながら待っているとようやく待ち人が来た。
今日はどこを散策して放浪していたのだろうか。
説明を求めてもマトモな答えが返ってくる保証は欠片もないけれど、ある程度は場所を把握しておかないと後で大変な目に遭うことは確実だ。

「こんなに小さかったんだあ……うわあ……」

その反応で本当に合ってるのか?
ジャングルジムのすぐ近くに立った背中に近寄って隣に並ぶ。

「子どもの時より当然身長伸びてるし、こんなもんだろ」
「そーなんですかねえ」
「そーなんですよ」

適当に受け流して、家に帰ろうと手を振った。
明日もしっかり予定が入っているのだ。
帰ったらすぐ飯作って、風呂入って。
指折り数えていたら、その思考を吹っ飛ばすように綺麗な顔が近付いてきた。

「あなたもジャングルジムで遊んでました?」
「は?まあ……それなりに」
「どんな?せーので言い合いましょ」
「交互に言えばいいじゃん」
「いーいーかーらー!」
「あー、はいはい」
「いきますよー、せーのっ」

「てっぺん目指して登ってた」
「下から入って迷路で遊んでましたー」

同時に言って、見つめ合う。
なんだって?

「迷路?」
「てっぺん?」

二人で見つめ合う。
山があれば勝手に登りに行く問題児が、ジャングルジムの下方で遊んでた?
そんな馬鹿な。

「んふふ」
「なんだよ」
「いや、だってさあ」

オレはおまえの幼少期が上手く想像できなくて悩んでるってのに、なに笑ってんだ。

「遊具一つ取っても正反対なのに、今はおんなじ方向見てるって思ったらたまらなくて」
「…………っ」

言葉にされるととてもヤバい。
自分で言っといて照れるアホから急いで目をそらした。
たぶんオレも、見せられない顔になってる。


お題「ジャングルジム」

9/24/2023, 9:06:05 AM