君は締め切られた部屋で呟く。
「太陽の下で思いっきり走ってみたい」と。
きっと叶うよと励ます僕も、その夢を持っている。
青く何処までも澄み渡る空や白い雲、キラキラ光る海や眩しい太陽を見てみたい、夜の輝く月だけじゃなくて。
僕らは外に出られない。陽の光を浴びる事が出来ないから。
だけど、どうして出来ないのかは知らない。
部屋は頑丈な扉で鍵が掛けられているらしく開けられない。この部屋から出る事が出来たなら……。
ある日、いつもみたいに朝ごはんが用意されてそれを食べていると被験者Aの女の子がドアを見つめている。「どうしたの?」と聞くと「鍵の閉まる音がしなかった」という。僕らは試しにドアを引いてみた。
開いた。初めて見る部屋以外の場所、僕らは頷きあって手を繋いで部屋を出た。外に出る為のドアはどれだろう。ただひたすらに走る、走る、走る。ブザーが鳴る、赤いランプが廊下を染める、それでも僕達は走った。空を見たくて。海が見たくて。色んな大人たちから隠れて外へのドアを見つける。ドアが開く。僕達は叫ぶ大人の声を無視して外に出た。
「わああ!空だ!」「海よ!キラキラして綺麗!」
手を繋いで二人で初めて見る景色に感動した。青い空と白い雲、何処までも綺麗な輝く海、こんな綺麗な景色を知らなかったなんて大人達は意地悪だ。
「空も海も見れた、何も思い残す事はないわ」「僕もだよ」
二人で見つめあっていると大人達の声がする。僕らはキラキラ光るウロコみたいに体が崩れていく。
「さようなら、また生まれ変わっても会いましょう?」
「うん、そうだね。生まれ変わってもまた、会おうね」
そんな約束をして僕達は、死んだ。
11/25/2022, 10:17:02 PM