苦痛に耐える猫の話
猫は我慢していた。愛しむ猫が他の猫といるのを見るたび我慢していた。一緒にいたその相手が好きだった場合、その場は腹を立てずに目をつむる。束縛するタイプでもないし、別にその猫の相棒でもないのでそれを見つけても直ぐに目をそらしていた。もしも相棒だったなら、目をつむる事なく許していただろう。相棒じゃないから目をつむらなきゃ自分が壊れてしまう。
動物占いが羊だった猫は、束縛しないせいで過去の相棒達を不安がらせた。猫は相棒に窮屈な思いをさせたくなかったし、要領良くするタチじゃなかった。
ただ、猫として嫌いな猫の側に愛しの猫が接近しているのを日に何度か見てしまうと烈火のごとく腹が立って嫌悪感で溢れてもうそ奴等と関わりたくなくなる。良い記憶まで勝手に失くなろうとしたりする。
あざとさは異性には関係ないようだ。猫も同じだった。真似こきのあざとい同性猫は大嫌いで気持ち悪いとすら思っているが、異性があざとくてもあまり感じない。そこまで自分は気に入られているのかと思ってしまうがそれだけだ。ただ、愛しの猫に卑怯な真似をするような猫は異性も同性も気に入らない。
愛しの猫にも自分と似たような所があると知っていた猫は、もうどうしようもなくどうしようもなかった。似ているはずなのに何故なんだと思ったりもする。自分が持ってない面も沢山あって、そこがまた愛しかったりする。姿を見ても行かなかったからどうでもいいわけじゃないし、探さなかったから気にしていないわけでもない。気になりすぎて絶対に見ない時もあるし、愛しの猫が嫌な猫達に攻撃されそうなときは波風立てないように絶対に近づかない。
こんな悲しいことってあるだろうか。
こんな事を気にしなくても上手に生きていける、普通の猫になりたい。何処かで花火の音が聞こえた。
6/29/2023, 12:34:45 PM