クジラになりたいイルカ

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飛べない鳥____

2022/11/11 小説日記


「マジでめんどくさいね」

「何あの態度」

「あいつマジで無理」

「空気読めよ」

悪口。昔からそれの言葉、行為が大嫌いだった。




される側がどれだけ苦しいか私は知っている。
する側がどれだけ傷つけられたか私は知っている。

それなのに人は傷つけられ悪口、愚痴を言う。
吐き出したくて辛くてたまらないから悪口を言う。

それってしょうがないのかな。相手が酷いことをしたから愚痴という盾の裏で悪口を言っているだけで、けしてどちらもいいものじゃない。それでも、ストレスは溜まるもので、私はそれを聞くのが一番嫌だった。される側やする側よりも聞く側の方が私にとって一番辛い。







私のクラスは優しい人が多い方だと思う。いじめなんてないし仲間はずれにしたりはしない。だけど、クラスに一人だけとても陽気で明るい子がいる。
9/4のお題だった「きらめき」にその子について一度小説日記を書いたことがある。

明るいけれど、とてもとてもわがまま。まるで小学生のように堂々と言いたいことを言える子だ。それが彼女の長所。その長所に助けられた人が多くいる。だが、逆に傷ついた人も多くいる。私はそんな彼女に対して不安しかなかった。

「なんか、〇〇(彼女の名前)おかしくない?」

体育の時間、チームが彼女と親友と一緒になった。他にも3人の陽キャ女子がいた。

「うん、ちょっと思った」

チームでリレーを続けているとき彼女はなぜか元気がなく近くにバレーボールがやってきても取ろうとしなかった。

「ご機嫌斜めなのかな…」

「そういうのまじうざい」

チクと少しだけ胸が痛む。親友が悪いわけじゃない。ただ、なんか嫌なんだ。何かが嫌なんだ。


試合が始まり私達は位置についた。親友は隣に、斜め前に彼女がいた。相手のサーブが来ると、このクラスで一番裏表がある女子がボールを上げた。

「ナイス!ナイス!」

「いいよ!いいよー!」

などと手を鳴らす音とともに掛け声がこちらから聞こえる。さすが陽キャグループ。それに、私もハブられないように「おー!すごい!すごい!」と言い手を何回か鳴らした。

しかし、相手のコートに返すもまたこちらへボールが返っていた。それは大きな山なりで優しいボールだった。完全に彼女目掛けて落ちてくるボールに周りが「〇〇ー!」、「〇〇お願い!」と声を掛け合った。





___……え?w

その場にいる全員がそれを心の中で思っただろう。彼女は歩きながら落ちてくるボールに近づき取ろうとしなかった。それは、落ちていないはずのボールを拾おうとせずに落ちたあとのボールを拾いに行くようだった。

その姿に全員が言葉をなくすが「惜しい!惜しい!!」、「〇〇どんまーい!」とすぐに声を掛け合う。さすが陽キャグループ。

試合はボロ負けだった。終わった瞬間、親友がサーブを取ったクラスで一番裏表がある女子に駆け寄り耳元でこういった。

「〇〇やばくない?」

「マジでめんどくさいね」

「何あの態度、」

少し距離があったとは言え、私には聞こえた。彼女は近くにいないかと冷や冷やしたが幸い近くにはいなかった。

彼女はたまにこういうことがある。なにか気に食わないと一方的に怒り空気を乱す。そういう性格だ。部活でもそのせいで大変だった。私も彼女に部員の前で散々悪口を言われたのを覚えている。「イルカってうざくない?」など。それを私や他の部員は静かに聞くだけで空気が最悪だった。

彼女が悪い。わかっている。私だって酷いことをされた。けれど、なんでそれでも彼女が悪いと思えないのだろう。

その後は親友とトイレに行き、彼女の愚痴を散々聞かされた。トイレを通り過ぎないかと心配だったが反対側の階段から行ったようで来る気配はなかった。


「あいつマジで無理」

「あー、ね、」

なんとなく言葉を返す。

「空気読めよ」

「たしかにねー、」

なんとなく返事をする。


彼女の気持ちもわかるし親友の気持ちもわかる。だから、偽善者とよく自分自身に言われるのだ。10分程度悪口、愚痴を聞かされ教室に戻った。すると、彼女の機嫌は直っておりテンションがさっきの何倍も高かった。

少しだけ鼻で笑ってしまいそうになる。


こんな些細なことが積み重なって貴方は嫌われてるってわかってる?
そう言いたくなる。

このままじゃ貴方はどんどん嫌われ続けるんだよ?
そう言いたくなってしまう。


一人でこんなことで悩んでいる自分が馬鹿みたいだ。彼女は知らないんだ。自分が飛べないことに。周りは小学校から一緒で彼女はこういう人と理解があるから合わせてくれる。飛べるのに一緒に歩いてくれる。けれど、それを彼女は当たり前だと思っている。本当はみんな飛べるのに。


そんなふうにまた悩む自分が馬鹿だなと思う。そうやって深く考えるから愚痴を聞かされると辛くなるのだ。

される側もする側も聞く側も
それぞれ苦しさがあり、それぞれ悩みがある。

よく道徳のお話では喧嘩している間の人が仲良くさせたり第三者、聞く側を利用して中和しようとする。けれど、現実ではそんなこと上手くできっこないんだ。









あとがき

ここまで読んでくれた方ありがとうございました。不快に思わせてしまった方、すいません。

よかったら「きらめき」の小説日記も読んでみてください。彼女についてよくわかると思います。






11/11/2022, 2:15:43 PM