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- 三日月 -

好きな方がいます。
否、人ではありません。
私は月に恋をしています。

たおやかで、いじらしい、小さく控えめに光るあの方が好きです。この世の光るもの。全てが月の光でできていたら…と妄想せずにはいられない私です。

なぜ地球になど生まれてしまったのでしょう。なぜ私はかぐや姫ではなかったのでしょう。と夜な夜な泣いてしまう日もありましたが、この星でならあなたの姿がしっかりと見えることに気づいて、それ以来涙を流すことはなくなりました。はい。オプティミストなのです。私は。

幼い頃からこんな性分でしたので、人間の友達は1人もおりません。私もお月さま以外に興味は持てません。ただ1人、夏目漱石とならお友だち、ソウルメイトになれたかも、と思ったこともあります。ですが私以外にお月さまに焦がれる人がいるのは癪に触ります。なので夏目漱石は私のライバルとなりました。はい。同担拒否なのです。私は。

というわけなので私は月を購入いたしました。もちろん、全てを所有することはできなかったので、ほんの数分の1……三日月ほどの広さを購入いたしました。

ちょうど今日のお月さまは三日月の形をしていらっしゃいました。誰にも私のお月さまを見て欲しくないのですが、三日月の日だけは別です。空に浮かぶ薄く輝く細い月は、まるで天使の爪のかけらのような。そんな神聖な美しさです。あの三日月は全て私のものなのです。そう考えるといつもよりも心に余裕が生まれます。どうぞ私の愛するあの方をご覧ください。誰にも触れることはできませんが……といった気持ちです。顕示欲というやつです。ですがもちろんじろじろと不躾な目で見続けるのはおやめください。

いつかあなたと添い遂げるのが私の夢です。それまではどうかそのまま。すこやかに空に浮かんでいてください。隕石にはどうぞお気をつけください。

あなたが滅ぶくらいなら、地球に流れ星が降り注ぎますように。

1/9/2026, 11:39:43 AM