九十九星華ーtukumo seika-

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「優しくしないで!」
そう、彼女に言われた。
だって君が優しい人が好きって言っていたから、僕は頑張って優しい人を演じていたのに。
「僕のどこがダメだったの?
直すよ、君がそれを望むなら」
僕はできる限り優しい声色でそう言った。
「だって、あなたは私を庇って車に…」
ああ、そうか。
僕は今さっき彼女を、結花を庇って車に轢かれたのか。
そんなことを思い出していると、僕の頬にポタポタと水滴が落ちてきた。
…涙だ。結花の。
「泣かないでよ。最後ぐらい笑って欲しいな。結花には笑顔が似合うんだから…。」
「だって、どんどん心音が弱くなっていってっ」
ああ、こんな上っ面な僕よりも、君の方が十分と優しいのに。
「結花は優しいね。」
「あなたは酷いわね。ずっと私を騙してきて。」
えっ?
「ごめんね。私があんなこと言っちゃったせいでずっと"優しい人"を演じていたんだ。
でもね、そうじゃないあなた、素のあなたも大好きだった。」
「…バレてたんだ。ごめん」
「いいの。
それと、ごめんを言うのは、元気な姿になってから言って欲しいわ!」
「わかったよ。君の好きなケーキもプラスでつけよう。」
「……約束よ。」

5/2/2024, 2:02:28 PM