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ミーンミンミンミーンミンミン
 暑い夏の日。
 真っ青な海に足を運び、そっと靴を脱いだ。麦わら帽子が風で揺れている。ジリジリと肌を焼く太陽も今日だけは愛しく思えた。これが最後だと思えば…。
 「おはよう。今日も可愛い。」
毎朝鏡に向かって私は言う。何年も続けてきたことだから習慣になっている。私はごく普通の家庭で育ち、ごく普通の高校生活を送っている。キラキラした人達のようではないが、友達もいて、部活も楽しい。ただ、時々自分の存在意義に疑問を感じることがある。何をするために私は生きているのだろう、このまま何も成し遂げず死んでゆくのかと。
 平々凡々な私の人生に何かスリルや、刺激が欲しい。今日からは夏休みだし、時間はたっぷりある。何を始めようか。
 まず、家出をしよう。このまま電車に乗って県外まで行くのだ!…そうおもったがお小遣いが足りなかった。ならば、定期を使おうではないか。私の学校は海の見える田舎の学校だ。今日は普段着ない白いワンピースなんか着ちゃって誰かに会ったらどうしよう。まぁそれもスリルだよね!下手くそなメイクを薄くして、いつもとは違う自分になる。汽車で揺れるこのリズムが心地良い。あれ、なんかうとうとしてきた……
 プシュー
 「ハッ!」
汽車のドアが開く音で目が覚めた。どうやら目的地に着いたようだ。慣れた手付きで定期を出し、駅を後にする。さて、海にでもいこうか。今日は冒険気分でどこまでも歩いていける気がした。商店街で見かけた麦わら帽子が可愛く、思わず買ってしまった。…今日くらいいよね?
 さて、海に着いた。潮風が髪を撫で、ワンピースをヒラヒラと靡かせる。
 「気持ちいいー!」
思わず叫んだ。両手を大きく広げて、それこそ空でも飛ぶように。何もない私のちょっとの冒険。誰かさんからすれば当たり前かも知れないけれど、私には特別なこと。 
 「疲れたし、もうしばらくはいいかな。」
 砂の上に寝転がり、全身砂まみれ。海で流そうと足を入れる。爪先から伝わる温度に身震いした。これが最高ってやつだろう。生きてる感覚がここにある。私はきっと疲れていたんだ。生きることに責任や義務感を感じていた。もっと自由でいいのに。やりたいこと、やりたくないこと選り分けて、私らしさを見つけていく。そのなかで少しでも私がこの世界に刻まれるように。生きる意味を求めてしまうのは多分人間として仕方の無いことなのかもしれない。だけどもっと羽を広げていきたいと思う。まだまだ人生は長いのだから。ここから成功、失敗、喜び、悲しみ、愛を見つけて、なん十年いや、死ぬまで分からないことを考えていく。そんな生き方も良い。そんな風に思えたのは、今日の私のほんの小さな勇気のおかげ。

 

4/27/2024, 6:09:47 PM