理性

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#だんだん理性が溶けていく話

■丁寧語をやめたくない人の場合


〈理性が溶けた後〉

二人だけの時間が流れ、夕闇が部屋を包み込むと
外の世界がかすかに遠ざかるような静けさが
広がっていた。
彼女はそっと彼の肩に寄り添い
彼の手を握るその感触が
まるで確かな絆のように彼女の心を満たしていった。

「こんな気持ち、初めて…」
彼女は小さな声で呟いた。
自分の言葉に驚いたように少し顔を上げると
彼と目が合った。
彼の視線には、優しさと何か特別な感情が
宿っているようで、彼女の心をさらに深く揺らした。

彼は静かに微笑むと、そっと彼女の髪に触れた。
その仕草は控えめでありながらも
そこには深い思いが込められているのがわかった。
彼女はその温もりに応えるように
再び彼の肩にもたれかかった。

「…こんな風に、ずっと一緒にいられたらいいのに。」
彼女は小さな声で漏らした。
胸の奥から溢れ出す願いに、彼女自身が戸惑いながらも、その言葉はどうしても口から零れ落ちてしまった。

彼は答えなかった。ただその代わりに
少し強く彼女の手を握り返す。
その沈黙が、言葉以上に彼女の心に響いた。
静けさの中で、二人の想いが織り成されていく。
まるで、時間の流れすら二人を包み込むように
感じられた。

その夜、二人の間には新たな何かが生まれた。
それは言葉では説明しきれないほど繊細で
けれど確かに存在するものだった。
彼女はその気持ちを胸に秘めながら
そっと目を閉じ、彼のぬくもりに身を委ねた。

終わり

3/20/2025, 3:40:04 PM