ぺんぎん

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あんなに覚悟をしていたのに、いざ脚を水面にひたしてみると、またきみを反芻してしまっている。波からただよう潮の匂い、ぼろのヨットでからだをからだにもたせかけて眠るときのきみの息の音。あの夏、ふたりは入道雲を掻き、その先の海をふたつに裂いた。
からだじゅうにぱんぱんに潮の匂いが満ち、その隙間に、きみのうなじの上品なコロンの匂いを反芻する。きみに、すべてに、ふれられる想像をする。ぼろのヨットに乗りこむ。これからの夏にきみはいない。

10/25/2023, 5:25:13 PM