haru

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まだあたしだった頃の私を拾いに来た。

実際の風景と、ずっと持っていた風景にはズレがあって、上手くはまらない。なんとかはまった部分は盛り上がって、そこだけ異世界のようだ。目眩がする。行き交う人達が、双子にも、三つ子にも見える。
それでもなんとか、商店街の端に、空き地の中心に、歩道橋の上に、あたしを見つけた。
あたしはなんだか不安そうで、暇そうで、そして俯いて何かを探している。
何を探していたんだっけ。
どこのあたしも、ひとしきり探したら、走ってどこかへ行ってしまった。

最後のあたしを見つけた時、それはすっかり女の子で、制服なんか着て、お友達と同じように笑っていた。もう俯いて何かを探してはいなかった。
夕陽を背負い、かつての家路を行く。数歩離れて私も歩く。もうすっかり風景とのズレは無くなって、世界は終わろうとしているのに、こんなにも鮮明。
あたしが少し振り返った。驚いて立ち止まった時、目の前を電車が駆け抜けた。
「     。」
ふいに出た言葉は喉奥で消え、視界が抜けた踏切の向こうに、もうあたしはいない。
世界は遮断され、風景の線は単一になる。
見つけたのかしら。それとも
見つかったのかしら。

足元を見ながら、自宅に帰る。
いつの間にかすっかりの夜。歩き慣れ始めた道。俯いてはいるが、何かを探しているわけじゃない。
…拾い忘れたものがあったような。
ガード下を通る。電車は頭上を行く。世界は並行して在る。
少しずつ、落として、置いていく。

またね。



(行かないで)

10/24/2023, 2:53:16 PM