「海はね、必ずあなたを守るから」
「海に行くなら、夜に来なさい」
「昼や夕方もいいけれど、夜も意外と綺麗なのよ、"夜の海"っていってね」
「一度でいいから、あなたの目でしっかり見てみなさい」
俺の母親はそう言って死んだ。
母の言った"夜の海"が気になって、沿岸に呼ばれているように足が進む。
着いた。これが"夜の海"か。
綺麗だな。昼や夕方も良いけど、俺は夜のほうが好きかもしれない。
人一人おらず、夜空に瞬く数えきれない星。
今日は満月か。真っ暗な世界に、月明かりがほどよく照らす。
これのことか。母の言っていた意味とは。
海のように寛大な母、なんて言うが、
確かに「必ず守ってくれる」気がするな。
_2023.8.15「夜の海」
8/15/2023, 11:59:46 AM