NoName

Open App

 月が西の空に沈む頃。真っ暗だった空は薄い雲の形を露わにし、山の縁を薄墨色で染めていく。
 人の寝息と、虫の囁く声が空気を震わせる夜明けを独り占めする、空虚感。
 誰も起きていない。誰も動いていない。でも、確かに生きている、その時間。
 私の1日は、夜明けより早く始まるのだ。

10/20/2024, 3:39:21 PM