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美しい。

私が初めて矢並嶺二と出会い、彼に抱いた第一印象がこれだ。
美しさというのは、シンプルなようで難しい概念だ。人によって異なり、地域で異なり、時代で異なる。ある場所で、ある時代で美しいとされた人が、所変わればかその美しさの価値を無くす。

しかしながら、彼、矢並くんだけはどの場所であっても、どんな時代であっても、美しいと、そう人々に称えられるのでは無いだろうか、そう思ってしまうほどに彼は美しさというものを内包していた。

その美貌もさることながら、行動、言葉遣い、性格、そのどれもが完璧で、計算し尽くされたような存在。もはや異様とも言えるほどにその美しさには隙がない。その顔は美しすぎて、いっそ近づきがたい雰囲気を醸し出すのに、彼の性格と立ち居振る舞いが、ピンと張った糸を程よく緩ませるかのように柔らかで落ち着いた雰囲気へと変化させる。

私の友人の1人は、私含め、自他共に認められるほどの天邪鬼でひねくれた性格をしていて、まずはケチをつけずにはいられない。そんな友人でさえ彼を見た時の最初の一言は「綺麗…」だったのだから、その度合いも知れるというもの。
とはいえ、その後すぐさま、「いっそ、気持ち悪いほどだ。人形かなにかかよ、見てらんねー。」と吐いて、その後の大学の講義をサボって帰宅してまで彼を避けたというのだから、彼の逆張り精神もなかなかに極まったものだと思う。

さて、そんな美の化身たる矢並くんは、当然ながら、大学では有名な人気者だ。周囲には性別問わず常に多くの人が彼を囲い、少しでも彼の注目を買うべく努力している。一方私といえば、誰とつるむ訳でもなく、狭く閉じた人間関係の中で日々を過ごしているものだから、当然社交的でキラキラしている舞台のど真ん中にいるような彼らとはとんと関わりがない。
どちらにとっても積極的興味がなく、正しく平行線のような、交わることの無いグループだと思っていた。

そんな認識が覆ることになったのは、ひとえに今年の春からゼミが始まったからにほかならない。たまたま偶然、示し合わせたわけでもなく、こちらが狙った訳でもない。ただ単に、いくつかあるゼミの中でたまたまお互い同じゼミを志望し、そして採用された。それだけの事である。
それだけなら精々、これからずっと使われることもないであろう連絡先を、形式的に交換するだけに留まったであろうが、それだけで終わらなかったのは、ゼミの懇親会にてお酒を飲み、少し酔っぱらった彼の住む家が私の下宿するアパートの近くだったからに他ならない。

お互いの家を知ってしまい、かつ、時間割が似通ってしまったのだろうか、お互いの通学する姿をよく見かけるようになってしまった。
互いが知り合いで、特に仲が悪い訳でもない関係性。出会ってしまって、目的地も同じとくれば一緒に通学するのも自然な流れ。ましてや、驚くほど親しみやすい性格をしている彼の手にかかれば、私はNOとは言えないタイプの日本人であるからして、結果は言うまでもない。そうしてしばらくそんな生活が続いたかと思えば、いつの間にかそれがお決まりと言うかのように、お互いの家に互いを迎えに行くようになっていた。

それを聞いた友人の顔と言ったら傑作である。同じゼミになったと言うだけなら、そうなんだ、ふーん。でそんだのかもしれないが、いつの間にやら仲良くなって、日陰者同士だったはずの私が舞台のど真ん中にいるはずの男と互いの住所を共有し、一緒に通学する仲になっているのだからそんな顔になるのも無理はない。何せ私も信じられないのだから。



うーん続きが思いつかないけど生産元である私が腐っているので多分これはびーえるになります。多分矢並くん×私(一人称視点)かな
・矢並くん視点で、私についてを書く
多分彼にとっては、初めて身近にとどまっていながら明らかに自分にあまり興味が無いんだろう、と感じる相手。普通はね、興味なかったら一緒に過ごすことないからね、視界に入らないし気づかないよね。で、ちょっとずつ特別になっていく、一旦矢並くんの仮面が外れるとか。でも仮面じゃなくてもいいな。本当に、心から親しみやすいながらも穏やかで落ち着いた人柄で、正しく善人!って感じでも、こう、ちょっとわんこ属性的なものが付与されそうなカプになる。
おしまい!お題で無関心とか来たら書こうかな…

6/11/2025, 2:05:18 AM