夜行

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梅雨の足音が聞こえてまいりました。

貴方との約束の季節。

人目を憚りひとつ傘の下で秘密の逢瀬。

嗚呼、次の雨の日も必ず逢いにくると言ってくださったのに。

梅雨は、雨空でしか触れ合うことのできない私達の唯一でしたのに。

ごめなさい、許してほしいなどとは言いません。

貴方をおいて行ってしまう。

もうこの腕は貴方を抱きしめることはできない。

もうこの眼は貴方を映すことはできない。

もうこの耳は貴方の声を聞くことができない。

もうこの鼻は貴方の香を嗅ぐことはできない。

もうこの口は貴方と口付けをすることができない。

嗚呼、熱い。まるで此処が地獄。

燃え盛る屋敷、倒れた柱がわたくしの脚を貫きました。

嗚呼、熱い、痛い、苦しい、怖い、だれか、だれか!

わたくしを貴方のもとへ!!







6/1/2024, 4:41:37 PM