夜行電車の窓を覗き込む。街の明かりが、遥か彼方に遠ざかる。近年では開けている窓から吹き付ける夜風が心地よい反面、私はどこへ行くのだろうと思考を巡らせる。「どこか遠くへ行こうよ」そう言った友人の言葉が脳内を駆け巡る。車はないので、電車で。その友人は隣のベッドで静かな寝息を立てている。日常の柵から外れた、当てのない旅。期待と不安が綯交ぜになった顔を、電車の灯だけが照らしていた。
7/9/2023, 3:23:14 AM