明良

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SNSで知り合った人と、勇気を出して会ってみた。
実際はどんな人かわからないまま会うのは怖かった。
何度も通話したり、他の人とのやりとりもチェックしたりしたから、大変なことにはならないとは思うが、待ち合わせは家から離れていて、人通りが多いところを提案した。

実際のその人はイメージしていた以上に和やかな人で安堵する。近くなカフェに入り、ぎこちなく話し始める。チャットではお喋りだった自分に恥ずかしくなった。知り合ったきっかけであるSNSで、最近呟いたことの近況についてや、そもそもお互いのアカウントのどこに惹かれたのかチャット欄を開きながら記憶を辿るように話し出せば、だんだんと言葉が出てきた。
この人の年齢や職業や住んでるところは気になるが、今更聞くのも悪い気がするし、知らせなくとも話せるのがこの関係の良いところでもあるから気が引けた。
しかし別れ際、電車に乗る際に近所に住んでいることがわかり、それを皮切りに趣味以外で、色んなことをお互い聞いた。
駅についたときには「今度はわざわざカフェじゃなくて、近くで話そう」と手を振って別れた。友達みたいだ。
こんなのは、大学前でじゃあここで、駅で寄りたいところあるからここで、とすぐにそそくさ別れて帰る生活をし始めて以来だ。

近くの公民館では安く部屋が借りられるらしく、あの子と向き合うように机を移動させる。
「小学校の班みたい」と君が言っていた。
確かにそうだ。でもあの頃みたいに言われてやったわけでもない。もう大人だから、自分から動かなきゃ誰とも向かい合わせで食事したり、何かを作ったりすることはないのだ。
あの時勇気を出してよかった。そう思いながら私は、隙間を綺麗に埋めるように机を押し出した。

【向かい合わせ】

8/25/2024, 2:11:28 PM