# 星が溢れる
「“世界でひとつだけの星を見つけるのです”……ねえ?」
「星を持つってのは、そんなに良いことなのかな」
「さあな。俺はそんなもの持ってなくても十分幸せだけど?」
「でも、みんな言うじゃん? 星は素晴らしいものです、自分に合った星を見つけなさい……うんたらかんたら」
「ここで問題で〜す。この世界には人間が何人いますか?」
「確か70……80億行ったんだっけ」
「ということは? 世界には80億近くもの星があるってことになる。人によっては星なんて抱えるほど持ってる奴もいるだろうし、実質もっとあるだろう。そう考えると、ちょっと幻滅しねぇ?」
「何が?」
「こんな狭い地上に膨大な数の星が落ちてるんだぜ。まさかお前、“ひとつとして同じ星はない”とかいう妄言本気で信じてんの? 80億もあるんだから、同じ種類の星なんてその辺に転がってるよ。俺らが人生かけて必死こいて探し回ってようやく見つけた星がさ、実際はみんなと同じ平凡な石ころだったなんて、興醒め通り越して腹立たしいわ」
「……」
「星なんていらない。なるがまま生きればいいんだよ。そんなのなくたって、俺らは幸せになれるはずなんだ」
「……でも、星は綺麗だよ」
「あ?」
「同じ光を放っていようと、どれだけ密集していようと、綺麗なものは綺麗だ。80億もある、でもそれは、一人にひとつしかない貴重なものなんだよ。少なくとも、本人がそう信じていれば、それは世界でひとつだけの星だ」
「……」
「確かにこの世界じゃ、星は溢れていく一方だ。でも、その景色さえ、美しいと思わないか? みんなが世界にひとつだけの星だと信じるものが、ひとつの場所に集まったら、それはそれは綺麗な光になる」
「お前は夢見がちだよな」
「そうかな」
「そうだよ。星は綺麗なだけじゃない。近くで見れば、あんなものただのゴツゴツした石だ。衝突することだってある。平和なまま美しく光っていることなんか、できっこない」
「……それでも、僕はあの光が好きなんだ」
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星=綺麗、憧れ、届かないもの、大きい
=夢
3/15/2023, 3:09:34 PM