形のないもの
この世にはたくさんの傷がある。
切り傷、擦り傷、刺し傷
当然、痛い。血が滲んでジクジクと痛む。
今までハサミで手を切ったり、躓いて転んだり、針が手に刺さる事もあった。
けれどその度に傷は癒えていく、時間はかかるけど血は固まって痛みも引く。
いずれ跡形もなくその傷ごと忘れていく。
けれど簡単には消えない
忘れられない痛みがある。
その傷は目には見えない、形のないものだ。
何年も前の筈なのに、その痛みは今もなくならない。
それどころかより深く僕を蝕んでいる。
朝も昼も夜も、考えれば考えるほど
思い返すだけで気分は悪くなる。
数年前からお前とは1度も会ってないのに
いまだに鬱々とした気持ちは晴れない。
お前は僕の事を覚えてるかな。
僕はあの日からお前を忘れた事はなかった
目を瞑ると、へらへらした笑い声が聞こえる。
嘲笑うようなにやけ顔が見える。
終わらせたい。
今までの痛みを噛み締めながら
僕は玄関のベルを鳴らした。
9/24/2023, 12:03:17 PM