代理

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※戦争要素アリ

この前買ってもらったかっこいい服を着て、
うきうきで街へ出歩く。
兵隊さんも女の子も店員さんもみんな幸せそうで僕も嬉しくなる。

この前お母さんにもらったおこづかいでチョコレートケーキを買って、
家族みんなで食べるつもりだった。
カラフルなお店が可愛らしい。


『チョコレートケーキ?フルーツタルト?それともスコーン?迷うなあ。』



「好きなのを選びなさい。どれも美味しいよ。」



…突然、空から真っ黒で大きな【星】が降ってきた。
【星】は、床を燃やしている。みんなキャーキャーと嬉しそうに走っている。

外からお客さんが来た。パンパンとクラッカーの音を鳴らして
【黒い棒】を持った男の人が遊びに来た。
男の人は黒い棒でみんなを【赤いペンキ】で濡らしていた。

僕も真似して走ってみる。
キャーという歓声と、【赤いペンキ】と、燃えている建物を横目に。
花火と同じ臭いのする街から出ていった。



ーーーー



走ってどれほど経っただろうか。
もう何も食べたくない。

【あの日】から何年も経った。
あの【星】や【黒い棒】や【赤いペンキ】がなんだったのか、
僕は12歳になってようやく理解したんだ。

6歳のときの僕にはサプライズにしか感じなかったが。
家族に会いたい。

また、笑顔で笑いたい。
あの頃を、返してほしい。

…そうだ、会える方法があるじゃないか。

僕は、かつて拾った【黒い棒】を
頭に向けて、【トリガー】を引いた。

不完全で、無知な僕だから。
あの日、何も救えなかったんだ。




チョコレートケーキ、食べたかったな…





#不完全な僕

8/31/2023, 12:04:58 PM