狼星

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テーマ:踊りませんか? #325

みんな踊っていた。
文化祭の最後にダンスをペアで踊る。
私はペアが作れなかった。
男子とも女子とも……。
そんな子他にいないのに…。
私はため息を付きその場を離れようとした。
「一緒に踊りませんか?」
急に後ろから手を引かれた。
私は振り向く。
そこにはクラスのお調子者。
馬鹿にしているんでしょ。
運動音痴な私を。
私は手を振り払おうとしたが離れない。
私がキッと睨むと相手の顔を見てそれをやめた。
馬鹿にされているような気はしない。
真剣そのものだったから。
きっとこれも演技よ。
騙されちゃだめ。
絶対に踊れない。
私は首を横に振る。
「大丈夫。俺に合わせて」
同時に体を引き寄せられる。
ダメだって! 
笑いものにされちゃう。
私はぎゅっと目をつぶる。
「大丈夫。ちゃんと見て。俺だけ見ていればいい」
いつものお調子者の彼とは思えないほど落ち着く声。
私が目を開けるとそこにはふっと笑う、
私の知らない彼がいた。

10/4/2023, 12:28:49 PM