儚花

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星空の下で



しあわせだった想いでが

たったの一つだとしてもあることは

あまりに美しいことだ


想いでは美化されて

軽やかに手放すことが

難しくなるとか、よく知っている人はいう


でももし

美化することで

いつまでも忘れず愛していられるなら

わたしはそれがいい


いちど

狭い脱衣場の天井に貼った

暗がりに光る星型のシールをみあげながら

背中をだいて貰ったことがある


わたしは彼のからだにすっぽりと包まれた

偽物の星でもわたしには大宇宙みたいだった

宇宙でふたりぼっち

幸せだった

忘れない、と思った



喜びに胸が張り裂けて

わたしは嗚咽をおさえられなかった

彼は、そんなわたしを見て

誤解をして、自分を責めたのだろう

わたしをなじり

去って行った




胸が張り裂けてなお

愛する男性に出逢えた人生を

愛している



ばかみたいに初心に愛した

好きすぎて、好きすぎて

近くにいるだけで

なんにも話せなくて

恋心だけが高鳴っていたっけ



彼とのあいだにあった

たった一つの

幸せな想いで

脱衣場の大宇宙

背中を抱かれてみあげた

星の瞬き



この幸せだけで

一生、愛していられる

それくらい甘い

甘い、甘い、幸せな時間だった

幸せな時間だった

4/5/2022, 11:01:38 PM